便秘(お腹が張る、腹部膨満感)

便秘の症状で
お悩みはありませんか?

便秘の症状でお悩みはありませんか?便秘はありふれた症状であり、多少便秘になったとしても重く受け止める方は少ないと思います。しかし、便秘が長引いている、なかなか解消する気配がないといった場合は注意が必要です。便秘でお悩みの方はお早めにご相談ください。

慢性便秘症

日本の慢性便秘症のガイドラインによると、便秘とは「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」とされています。例えば、能動的な排便が週に3回未満、硬い便が出る、残便感、強くいきまないと排便できない、排便に補助が必要、肛門が詰まったように感じるなどの中で2つ以上に該当すれば便秘となり、症状が6ヶ月以上長引く場合は慢性便秘症と呼びます。
便秘の原因や詳しい症状に応じて最適な対応が求められるため、安易に下剤を内服するのは禁物です。毎日排便できていないと「便秘」と診断されるという訳ではなく、すっきり残便感がなく排便できているのであれば大丈夫です。排便時に気になることがあれば、一度ご相談ください。

便秘の種類

機能性便秘

直腸性便秘

子どもや若い女性、寝たきりの老人が発症しやすい便秘です。排便を我慢すると、排便の直前の便が溜まっている感覚が鈍化し、便秘を発症します。直腸に刺激を与える浣腸や座薬などを使って排便を促進することで、便秘を解消させます。便を柔らかくするお薬を使うことはありますが、腸を強制的に動かす刺激性下剤は使いません。

痙攣性便秘

肉体的・精神的ストレスによって、自律神経が失調して大腸の一部がキリキリと痙攣したように収縮することで、ウサギの糞のような硬い便になります。痙攣性便秘を発症すると排便に支障をきたしたり、残便感なども症状が起こったりすることもあり、1週間程度排便できないことも珍しくありません。
特に、腹痛も起こる場合は、「便秘型過敏性腸症候群」という疾患も疑われます。
便を柔らかくするお薬が効果的なケースがほとんどです。そこまで硬い便になっていない場合は、刺激性下剤や浣腸を短期的に使用することもあります。大腸へ外側から十分な刺激を与えることで蠕動運動が正常な状態へと促されるため、ヨガやランニングなどの運動や腹部のマッサージなどもお勧めです。

弛緩性便秘

便を排出する大腸の蠕動運動が弱まると、便が大腸の中に長時間残り、水分が吸収されて硬い便となり、便秘に繋がります。寝たきり状態の方や高齢者が発症しやすいとされています。大黄やセンナなどの刺激性下剤を慢性的に使うことによって、大腸の動きが低下して便秘に繋がる場合もあります。
この場合は、刺激性下剤を少しずつ減らしながら、便を柔らかくするお薬や腸の動きをコントロールするお薬を使用し、便秘の改善を図ります。刺激性下剤はたまに使用するくらいなら不安が少なく効果的なお薬ですが、常用によってその刺激に慣れてしまう事より効果が減弱する可能性があります。常用は控えることを推奨します。

器質性便秘

大腸の中に巨大な進行がんが存在すると、便が進むことができずに便秘を発症します。こうした大腸そのものに便の通過を妨げる何かしらの物理的要因があるケースは、器質性便秘と呼ばれます。腹部エコーや大腸カメラ検査、CT検査などで状態を詳しく確認することが重要です。
大腸がんによって大腸の中が狭窄し、便の通過に支障をきたしている状態です。

薬剤性便秘

向精神病薬や抗コリン薬、抗がん剤などが原因となります。原因疾患の治療のメリット・デメリットを考慮し、便秘薬を処方します。

便秘が起こりやすい原因

便秘が起こりやすい原因便秘についての研究や論文を見ると、便秘が起こりやすい方の傾向や習慣が分かります。しかし、その習慣を改善したら便秘が完治するということではありません。あくまで目安として考え、改善できそうなものがあれば実践することをお勧めします。

便秘に影響する食生活・生活習慣・体質の傾向

  • 排便時間が定まっていないと男女どちらも便秘を発症しやすく、男性は一回の咀嚼回数が30回を超える方や、1.5L/日以上の水分を飲む方は便秘になりにくいとされています。一方で、女性は昼食を少なめに済ます方やダイエットをしたことがある方は便秘になりやすいとされています。
  • 毎日運動する方は、週1回運動する方と比べて便秘になりにくいとされています。
  • 肥満体型の方は便秘になりやすいとされています。
  • 不眠症の患者様は便秘になりやすいとされています。
  • 食物繊維を1日20g摂取する方は、1日7gしか摂取しない方よりも便秘になりにくいとされています。
  • 高齢の方は、筋力が低下する「サルコペニア」に注意が必要です。サルコペニアは、体の筋力のみならず腸の平滑筋も低下するため、消化管運動機能も弱まることで、便秘になるリスクがあると考えられています。適度に運動しましょう。
  • 朝食を摂取しない方は便秘になりやすいとされています。(便秘ではない方で朝食を摂取しない方は約2割である一方、便秘の方の3~5割は朝食を摂取していないというデータもあります。)

便秘の改善が
期待できる生活習慣や食事

慢性便秘症に対しては、乳酸菌、食物繊維、運動、水分補給が有効とされていますが、「どちらかと言えば水分や食物繊維を摂るべき」、「どちらかと言えば運動するべき」といった程度で、はっきりとした根拠がある話ではありません。

食物繊維の多い食事について

食物繊維は、食べ物に含まれるヒトの消化酵素で消化できない難消化成分と言われており、水溶性と不溶性に分けられます。不溶性食物繊維は、水分を吸収して大きくなり、便量を多くする働きをします。消化管通過時間と便量は逆相関の関係にあり、便量が増えると消化管内容物がスピーディーに排出され、便秘の解消が見込めます。
水溶性食物繊維は、消化管で吸収されずに大腸に届き、ビフィズス菌や乳酸菌などの腸内細菌の増加させる働きがあるとされています。

乳酸菌について

乳酸菌も便秘に効果的と考えられています。乳酸菌というと、はじめにビオフェルミンⓇ、ヤクルトⓇ、ヨーグルトを想像するかもしれません。こうした乳酸菌はプロバイオティクスと言われます。プロバイオティクスは「適量に摂取することで有効な効果が期待できる生きた微生物のことで、腸内細菌のバランスを整えることで健康に寄与する」と考えられています。下記のような理由から、プロバイオティクスが便秘に効果的と考えられています。

  • プロバイオティクスの免疫調整作用や抗炎症作用によって、腸の機能が改善します。
  • 乳酸菌などは酪酸や乳酸などの酸を生み出すことで、腸内のpHを下げ、腸の機能を向上させます。
  • 腸内細菌のバランスが乱れると多量のメタンガスが生じます。メタンガスによって摂取したものの通過に時間がかかりますが、プロバイオティクスは摂取したものの通過時間を整え、腸の動きを向上させる働きをします。

上記のように、プロバイオティクスによって、排便回数が多くなることで便秘の治療に効果的と考えられていますが、どのタイプの細菌をどの程度摂取すれば良いかについては個人差があり、必ず便の回数が多くなるという訳ではありません。

水分補給について

水分補給については、多量の水分を飲めば柔らかい便になるとイメージされがちですが、ただ単に多量の水分を飲んだからといって排便できるようになるということではなく、あくまで排便できる可能性が上がるだけです。
なお、ミネラルウォーター(特に硬水)にはマグネシウムやその他のイオンが含有されており、イオンの働きによって排便できる可能性が高まります。

運動について

運動が便秘に効果的だとする論文もありますが、根拠としては薄く、あくまで推奨レベルの話です。軽めの運動では腸機能は変わりませんが、ランニングなどのアクティブな運動は消化管の動きを促進し、便秘を防ぐ可能性があると考えられています。

女性と便秘

女性ホルモンの働きによって腸の機能が低下すると、食べ物が腸内を緩やかに進むようになります。そうすると、排便しづらくなり、便の水分が通常以上に吸収されて硬い便となり、便秘が起こりやすくなります。特に、月経周期の前の女性が便秘になりがちです。
また、女性は男性よりも腹筋が弱いため、腸の外から押す力が弱く、便秘が起こりやすいとされています。

便秘の検査について

医師が診察を実施し、生活習慣や便の状態、腹痛の有無などをチェックします。甲状腺機能低下症や糖尿病などの懸念があれば、血液検査なども実施します。また、大腸カメラ検査で大腸がんなどの器質的疾患の有無や腸のねじれ、腹部レントゲン検査で腸内の便やガスの蓄積状態などを確認します。

大腸カメラ検査

よくある質問

市販の便秘薬は効きますか?

処方薬と同じような成分が含まれるものであれば、同じような効果が現れる見込みがありますが、用量が足りないことがほとんどであり、処方薬と同じ程度の効果は期待できない可能性があります。

ツボ押しやマッサージで便秘は解消しますか?

腹部のマッサージや体をひねることは、腸に刺激が加わり蠕動運動が促されるため、便秘の解消に有効とされています。なお、ツボ押しの効果についてははっきりしていません。

便秘の解消に役立つ食事はどんなものですか?

食物繊維を豊富に摂取してください。食物繊維を摂取すると、大腸の中の水分や胆汁酸(腸の働きを促したり、便を柔らかくしたりする物質)が増えることで、便秘の解消に繋がります。また、腸内細菌が食物繊維を食べることで、整腸作用も期待できます。