潰瘍性大腸炎・クローン病

潰瘍性大腸炎について

潰瘍性大腸炎

潰瘍性大腸炎とは、大腸粘膜の一番内側の層で、潰瘍やびらんが生じる炎症性疾患のことです。炎症は直腸から口の方まで拡大する傾向にあり、直腸から結腸全域に至るまで広がる場合もあります。潰瘍性大腸炎は炎症の拡大範囲や症状の経過に基づき、次のように分けられます。

  1. 病期の分類:寛解期、活動期
  2. 病変の拡大に基づく分類:直腸炎型、全大腸炎型、左側大腸炎型
  3. 病状の経過による分類: 慢性持続型、再燃寛解型、初回発作型、急性激症型
  4. 重症度による分類:軽症、中等症、重症、激症

発症年齢

男性は20~24歳、女性は25~29歳で発症のピークに達しますが、高齢者が発症する場合もあります。男女問わず発症しますが、虫垂を切除した方は発症率が低下することや、タバコを吸う方も発症率が低いと考えられています。

潰瘍性大腸炎は遺伝と関係あるの?

昨今、各国の研究者によって潰瘍性大腸炎の発症に影響する特異的な遺伝子の存在が分かっており、遺伝子によって発症しやすい型が存在することが判明しています。なお、その遺伝子型の方が100%発症するという訳ではなく、食生活などの環境要因と複合して発症に至るとされています。

潰瘍性大腸炎の原因

自己免疫医機能の問題、腸内細菌による影響、食生活の欧米化などが関与すると推測されていますが、発症原因は現在でも明らかになっていません。

潰瘍性大腸炎の症状

血便下痢、痙攣が起こる腹痛が長引く傾向にあります。悪化すると、貧血、発熱、体重減少などの全身症状が起こる場合もあります。その他、関節や皮膚、眼で合併症が生じることもあります。

潰瘍性大腸炎の検査・診断

大腸カメラ診断のためには、まず問診で既往歴や症状の経過をチェックします。
潰瘍性大腸炎を診断するには、血性下痢が起こる別の感染症との鑑別が重要であり、下痢が起こる別の感染症や細菌に関して鑑別診断を実施します。
そして、レントゲン検査や内視鏡検査を行って大腸の中を確認し、大腸粘膜の組織の一部を採取する生検を実施して病理検査を行います。

大腸カメラ検査

潰瘍性大腸炎の治療

血球成分除去療法や薬物療法を基本としますが、外科治療を実施する場合もあります。薬物療法では、5-ASA製剤の経口薬や注腸薬を使います。活動期に寛解導入を目指してステロイド剤の注腸薬や経口薬を使うこともあります。
重度の症状がある方にはステロイド剤と5-ASA製薬を基本として使いますが、免疫抑制剤や抗TNF-α抗体製剤などの最新の治療薬を使うこともあります。血球成分除去療法は中等症以上の患者様の中で、ステロイド治療では満足な効果を得られない方に行います。

クローン病について

クローン病は若年層の方が発症しやすい炎症性腸疾患です。口腔から肛門に至るまで消化管の全域で潰瘍や炎症が生じる可能性がありますが、大腸と小腸、特に小腸の末端で生じる傾向にあります。また、炎症は非連続的(病変と病変の間に健康な部分もある状態)に起こる特徴があります。

発症年齢

10~20代の若年層が発症しやすく、男性では20~24歳、女性では15~19歳で発症のピークに達します。また、男女比は2:1程度で男性の方が発症しやすいとされています。さらに、先進国(中でもヨーロッパや北米)に発症者が多いとされており、食生活や衛生環境との関連が指摘されています。
高い生活水準の地域の方の方はタンパク質や動物性脂肪の摂取量が多いため、発症しやすくなっているとされています。その他、タバコを吸う方も発症リスクが高いとされています。

クローン病は遺伝と関係あるの?

クローン病は遺伝病には該当しませんが、地域や人種によって発症率が異なり、家庭内発症も報告されているため、遺伝的要因が影響する可能性は否定できません。クローン病の発症リスクが上がる複数の遺伝子型が存在することが判明していますが、その遺伝子型の方が100%発症するのではなく、環境要因が合わさって発症に繋がるとされています。

クローン病の原因

麻疹ウイルスや結核菌類似の細菌による感染症、遺伝的要因、腸管内の血管の血流障害、食事の中の成分による腸管粘膜の異常などが原因として推測されていますが、明確な原因は現在でも分かっていません。
なお、最新の研究によると、遺伝的要因を持つ方が、腸内細菌や食事に対して腸内のリンパ球などの免疫細胞が過剰に働くことで発症するのではないかと言われています。

クローン病の症状

部位によって症状には違いがあります。典型的な症状は腹痛や下痢で、50%以上の方に生じるとされています。発熱、下血、貧血、腹部の腫瘤、体重減少、全身の倦怠感などの症状もよく見られます。
また、腸管の合併症(狭窄、腫瘍、瘻孔など)や腸管以外の合併症(結節性紅斑、虹彩炎、肛門部の病変、関節炎など)なども典型的な症状です。

クローン病の検査・診断

クローン病の疑わしい症状があり、小腸造影や大腸カメラ、胃カメラなどの画像検査で独特の病変が発見されると確定診断を下します。

クローン病の治療

食生活の見直しや薬物療法を基本とし、外科治療を実施することもあります。薬物療法では、寛解期や軽症の方に5-ASA製薬を使用し、昨今は抗TNFα抗体製剤や免疫抑制剤なども有効と考えられています。副作用が起こりづらいブデソニドという最新のステロイド剤を使用することもあります。
食事指導では、下痢を引き起こす動物性脂肪が豊富な揚げ物などを摂取しないようにし、低脂質で消化しやすい和食を基本とした食事を推奨します。

公費助成制度について

潰瘍性大腸炎やクローン病は法律で難病に指定されており、「重症度分類等」に基づき一定の重症度以上となっている場合は公費助成を受けて治療が可能です。なお、潰瘍性大腸炎やクローン病の全ての患者様が助成を受けられるということではなく、原則として対象は中等度もしくは重度の患者様です。

※軽症の方でも高度医療を長期的に継続しなければならないケースでは、助成対象となります。

申請方法

医療費助成の支給認定を承認されるためには、お住まいの地域の保健所などの窓口で手続きをしてください。申請のためには、「臨床調査個人票(りんしょうちょうさこじんひょう)」という診断書などをご準備ください。支給認定を受けた方には、医療受給者証という書類が渡されます。申請手続きについて詳しく知りたい方は、お住まいの地域の保健所へご連絡ください。